日本の子育て世帯がなぜこれほど家計の苦しさを感じているのでしょうか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「年収700万円以上を稼ぐ男性は全体の約24%に過ぎませんが、それでも今や『余裕のある勝ち組』とは言えない状況になっています」と語ります。
年収700万円と聞けば、多くの人が「十分に裕福」「暮らしに余裕がある」と考えがちです。実際、国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、2023年の平均年収は460万円。年収700万円はその1.5倍以上であり、男性の場合、その水準に達するのは全体のわずか24%程度にとどまります。
しかし、年収700万円が本当に豊かで安心できる暮らしを意味するかというと、実情は異なります。
年収は年齢によって大きく差が出ます。たとえば25歳から29歳の男性の平均年収は429万円ですが、50歳から54歳になると平均689万円、55歳から59歳では712万円にまで上がります。つまり、50代の会社員にとって年収700万円は特別高いわけではなく、ごく平均的な水準なのです。
さらにこの世代は住宅ローンの返済や子どもの教育費など支出が膨らむタイミングでもあります。家計に余裕があるどころか、貯蓄したくても全くできない人が多く存在しています。
では実際に、年収700万円前後の50代世帯にはどれほどの貯蓄があるのでしょうか。金融広報中央委員会(日本銀行)の「家計の金融行動に関する世論調査」(2023年)によれば、50代で3000万円以上の貯蓄がある人は1割程度。一方で、貯蓄が100万円未満という人も約1割います。
また、50代の2人以上世帯の平均貯蓄額は1147万円ですが、中央値は約300万円。中央値とは、調査対象者を小さい順に並べたときに真ん中にくる数字で、実態に近い数字とされています。
この中央値が300万円ということは、半数近くの世帯は貯蓄が300万円にも満たないということになります。さらに、50代で貯蓄ゼロの割合は27.4%にも上ります。
2023年の調査では、「1年間で貯蓄が全くできなかった」と回答した人が28.1%に達し、貯蓄ができた人は全体の10%未満に過ぎません。つまり、貯蓄上位層が平均値を押し上げているだけで、実際には貯金がほとんどない人が圧倒的に多いのが現実です。
50代といえば、そろそろ老後の生活を真剣に考え始める時期。しかし、金融広報中央委員会の「金融リテラシー調査(2022年)」によると、「老後に必要な資金を用意できそうにない」と回答した人は70%を超えています。
こうした数字から見えてくるのは、年収700万円あっても決して「余裕のある暮らし」とは言えない日本の中流世帯の厳しい現状です。
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