無名の中国企業が突然、世界最高のAIと互角に渡り合うAIを発表した。この出来事が引き起こす可能性のある経済的な変動は、アメリカの反応次第で世界経済の風景を一変させるかもしれない。
DeepSeek、AI界の「麒麟児」か?
では、このDeepSeekが本当に中国のAI業界の「麒麟児」なのでしょうか?専門家の中には慎重な意見も多くあります。AIエンジニアで、昨年東京都知事選に出馬した安野貴博氏は、こう指摘しています。
「Meta(旧フェイスブック)ですらOpenAIのo1と同等のAIを作れないのに、DeepSeekがその挑戦をすることは本当に素晴らしい。しかし、”スプートニク・ショック”のような衝撃を与えるという見方には過剰だと思います。」
DeepSeekが発表したベンチマーク結果でも、数学的な分野ではOpenAIのo1を超えるものの、プログラミングや日本語などの多言語対応では、o1に及んでいないことが分かっています。また、「安く作った」とする主張についても、検証の手段がない上、創業者の梁氏が以前ヘッジファンドを率いていた際に大量のGPUを購入していたことから、そのコスト計算がどうなっているのかも不明確だと指摘されています。
「蒸留」の疑惑
さらにDeepSeekが急速に成長した理由として、「蒸留」と呼ばれる手法を使っているのではないかという疑惑が浮上しています。生成AIは膨大なデータを使い、試行錯誤を繰り返すことで賢くなりますが、その中で重要なのが「重みづけ」という技術です。AI企業はこの技術を独自に磨き上げてきましたが、「蒸留」とは、他のAIが出した最良の回答を学習させ、計算を省略することで、GPUの使用を抑える手法です。
OpenAIは、この「蒸留」を禁じているのですが、DeepSeekがその手法を使って急速に技術を追い抜いている可能性が指摘されています。もしこれが事実なら、DeepSeekはアメリカの技術の「上澄み」を吸い取って成長したとも言えるでしょう。
「超知能」を巡る激しい競争
AIの進化は単なるビジネスの枠を超え、国家の覇権を巡る戦いにまで発展しています。特に、汎用人工知能(AGI)の開発は、世界の覇権を握るための重要な鍵だと信じられています。OpenAIのサム・アルトマンCEOは、「AGIが完成するのは2027年で、その後、人類は一変する」と公言しています。彼にとって、AGI開発の競争は、もはやビジネスの競争ではなく、「戦争」のようなものだと考えているのです。
AIの未来はどうなるのか?
DeepSeekの登場によって、AI技術が安価になり、先端半導体が不要になるとの予測もありますが、実際にはその逆の動きが予想されます。OpenAIは、今後さらに人間を超える「超知能」を実現することを最終目的としており、そのためには膨大なGPUを必要とするため、アメリカがその技術を独占し、機密を守らなければならないのです。
これにより、米中間でAIや半導体を互いに使わせない「AIブロック経済」のような新たな競争が始まる可能性があります。テクノロジー企業間の競争が、今後ますます激化し、世界を巻き込む争いに発展する可能性が高いと予測されています。
すでに、新しい時代の「冷戦」が始まったのかもしれません。AIの進化は、単なるテクノロジーの競争にとどまらず、世界の未来を左右する重要な要素となるでしょう。
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